日本造園学会誌「ランドスケープ研究」82巻3号を発刊しました。
特集:
明治150年 生きている近代化遺産としての公園
平成30年(2018)は,明治元年(1868)から起算して満150年に当たる。
政府は,平成28年(2016)12月に「明治150年」関連施策の基本的な考え方とその方向性をとりまとめた。このとりまとめでは,「近年,人口減少社会の到来や世界経済の不透明感の高まりなど激動の時代を迎えており,近代化に向けた困難に直面していた明治期と重なるところもあることから,この時期に,改めて明治期を振り返り,将来につなげていくことは,意義のあること」との認識の下,「近代化の歩みが記録された歴史的遺産を再認識し,後世に遺すとともに,次世代にこれからの日本の在り方を考えてもらう契機となる施策を推進する」という方向性が示された。現在,国及び地方の行政機関,民間団体が参画し,多様な分野において,歴史資料の収集・整理,歴史的建物の保存・修復や公開,企画展示やシンポジウムの開催など,全国で約4千件の施策が展開されている。
この施策の基本的な考え方の一つは,「明治以降の歩みを次世代に遺す」ことである。「明治以降の歩み」とは,立憲政治・議会政治の導入,国際社会への対応,技術革新や産業化の推進など,明治以降の日本の近代化に向けた多岐にわたる取組である。
ランドスケープ分野における「明治以降の歩み」としては,近代的な公園に関する制度導入と建設が挙げられる。明治6年(1873)に発せられた太政官布達第16号は,日本初の近代的な公園制度であり,明治36年(1903)には,日本初の近代都市公園となる日比谷公園が開園した。いずれも日本の近代化の一端を担い,今日の都市公園の出発点となった取組である。様々な近代化遺産の中でも公園は,時代の要請に応じて変化しながらも,「公園」としての利用と管理・経営が連綿と続いていること,いわば「生きている遺産」であることが特徴といえよう。そこで,本特集では,明治期に誕生し,現在まで利用されている公園を「生きている近代化遺産」と捉え,明治期から今日に至るまでの公園の利用と管理・経営に主眼を置いた論説や対談を展開して頂いた。
本特集を契機に,明治期の公園の成り立ちとともに,その利用と管理・経営はどのようなものであったかを再認識し,人口減少に伴う都市の縮退等の新たな時代の変化に対応するための,これからのパークマネジメントについて議論が活性化することを期待したい。
(特集担当: 浦﨑真一,柳原季明)
特集にあたって
明治 150 年を機に近代化遺産としての公園を考える意義 浦﨑真一
1.総説
インタビュー:日本の近代都市公園 150 年の教訓 白幡洋三郎
2.論説
近代都市公園制度の歩み 柳原季明
近代日本が見失った公園の理念 -「偕楽」と公共の非連続- 上安祥子
城址公園の誕生 野中勝利
黎明期の公園経営 -民間活力の導入と公園財政- 金子忠一
市民からみた新しい都市空間としての公園への期待と利用 小坂美保
3.事例
日比谷公園 -近代化の象徴としての公園とその文化- 竹内智子
奈良県立都市公園奈良公園 -その保存と活用- 岡崎拓哉
円山公園の開設と改修の歴史 今江秀史
弘前公園 -地域のシンボルとしての史跡公園- 小林 勝
東遊園地 -市民が育てる公園- 村上豪英
みどりの図書館東京グリーンアーカイブス -公園史料保存の取組- 梅本美奈子
4.総括
座談会:「生きている近代化遺産」のためのこれからの公園経営のあり方 進士五十八・町田 誠・小野 隆
なお、本号では連載記事の「造園雑誌アーカイブ」「これからのランドスケープの仕事」「海外の造園動向」「生きもの技術ノート」も掲載されています。