ホーム » 学会誌刊行情報 »

ランドスケープ研究87(1) 世界への発信に向けて日本のランドスケープを考える

日本造園学会誌『ランドスケープ研究』87巻1号を刊行しました。

特集:「世界への発信に向けて日本のランドスケープを考える」
Considering Japanese landscape for disseminating toward the world

脱炭素社会やグリーンインフラストラクチャ―という言葉が社会的認知を高めて久しい。加えてNbS(Nature-based Solutions),TNFD(Taskforce on Naturerelated Financial Disclosures)といったランドスケープ分野と親和性の高い概念が,すでに活発に議論されてきている。さらにはコロナパンデミック,ロシアのウクライナ侵攻,それらの結果としてブロック化が進む世界情勢は,生活のありとあらゆる領域に影響を与えつつあり,造園学会員諸氏の活動が海外の状況と無関係に存在することは不可能であろう。そうした状況の中,日本では2023 年秋には日中韓国際ランドスケープ専門家会議,そしてIFLA のアジア東京大会が相次いで開催される。また2027 年には国際園芸博覧会が横浜で開催される。

そこで本特集は,日本国内で議論されているランドスケープの在り方と海外のそれをあらためて比較し,日本のランドスケープをグローバルに発信する機会を間近に控えた今,その機会をどのように迎え,どのように発信するのかを再確認,もしくは考える機会と材料を提供することを狙いとして企画した。

特集にあたっては,あえてランドスケープという言葉の定義や議論の領域を限定することはせずに,ランドスケープ・アーキテクトを中心としつつも,より幅広い視点からランドスケープに関わる分野で活動する方々の意見や論考を紹介することを心がけている。

総論では,日本のランドスケープ・デザインが海外で何を期待されてきたのか,海外ではランドスケープとその周辺の領域をどのように見つめているのかを,それぞれの分野の第一人者に語っていただいた。

続く論説部分は三部構成とした。第一部は,実際に海外で活躍する4名の日本人ランドスケープ・アーキテクトの方々の実際の声を聴くこととした。第二部は,日本と海外のランドスケープに対する視点の同質性と違いを浮き彫りにすることを意図して,3名の方にそれぞれの視点から執筆いただいた。そして第三部では,日本でこれから開催される国際的なイベントをリードする2名にその狙いを語っていただくこととした。

最後に企画した対談は,ランドスケープ・デザインと環境倫理や環境マネジメントの相互作用の中から,日本のランドスケープのこれからに向けた視座を見出していくことを意図したものである。

今回の特集が会員各位のこれからの活動に寄与することとなれば幸いである。

(編集担当:植田 直樹・金 睿麟・エルミロヴァ マリア・新保 奈穂美)

目次

総論

〇日本のランドスケープデザイン ~過去・現在・未来~
戸田芳樹

〇ネイチャーポジティブに向かう国際動向の最新状況
原口 真

論説

〇IFLA Europe の教育ガイドラインから考察するランドスケープ・アーキテクトに期待される社会での役割
上原三知

報告

〇ヨーロッパにおけるランドスケープ・アーキテクトの活動と役割
-雨水管理方策とそれがもたらす新たな価値-
木藤健二郎

〇ランドスケープ・アーキテクトと気候危機 -アメリカの2つの事例を通して
別所 力

〇中国におけるランドスケープデザインの重要性と課題
大川善成

〇ベトナムにおけるランドスケープアーキテクトの活動と役割
高橋尚史

論説

〇ヨーロッパにおけるランドスケープアーキテクチャに対する思想と空間の多様性
中島悠輔

〇社会的課題に対応するランドスケープ ~公園緑地と社会的包摂~
林まゆみ

〇ランドスケープアーキテクトが開催する国際会議とは
平賀達也

〇2027 年国際園芸博覧会(GREEN × EXPO 2027) に向けて
脇坂隆一

座談会
世界とのつながりの中で考える日本のランドスケープの発信のあり方
篠沢健太・太田和彦・香坂 玲・植田直樹・新保奈穂美

※発刊からおよそ3か月後に、執筆者の許諾が得られた記事はJ-STAGEにて公開しております。