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ランドスケープ研究84(2) 論文レビューの方向を探る

日本造園学会誌「ランドスケープ研究」84巻2号を発刊しました。

特集:論文レビューの方向を探る
Exploreing Directions of Review Article

ランドスケープ研究では,2008 年に再開された全研究領域の網羅的な論文レビューを皮切りに,以降2年毎にレビュー特集号が発刊されており,2号分で概ね全領域のレビューが完了するように編集されている。本特集は,「1回目:2010・2012 年」「2回目:2014・2016 年」「3回目:2018・2020 年」と続くレビューのうち,3回目の後半部分に相当する。
本特集の主旨は,タイトルに率直に表れているように,論文レビューそのものの方向について考えることである。そのため,現在のレビュー特集が抱える課題や今後の編集の在り方について議論し,その結果を座談会記事として特集冒頭に配置した。さらに,著者の皆様には,4年分の研究動向について,網羅性を条件とせず,著者独自の視点にもとづくレビューを行っていただくことを依頼した。
論文のレビューは知見の体系化を目的とする学術の世界では不可欠であり,毎年,論文や研究発表を通じて新たな知見が提供されるため,定期的にレビューを行うことが重要である。しかし,応用的な側面が強く,社会動向や技術発展に応じて学術の領域が柔らかく変容するランドスケープ分野においては,時代に応じたレビュー領域の見直しも必要だろうし,論文のオンライン化が今後さらに加速し,優れた検索性をもったAI が実装されることを鑑みれば,「人でなければできないレビュー」の在り方を今の段階で考えておくことも必要である。2010 年以降の2号分のレビューが3巡する今期の特集において,こうしたレビュー特集の見直しを行うことが適切だと考え,本特集を企画した。
レビュー論文は,その学術分野における大切な財産のひとつである。その財産のあり方について議論し,また,新たな財産を加えてくださった本特集の著者の皆様に感謝申し上げる。本特集が今後のレビュー特集のあり方を議論するきっかけとなり,より発展した形で将来のレビューへと引き継がれていくことを期待する。
(編集担当:寺田徹・根岸勇太・大石茉由佳)


目次

特集にあたって
特集「論文レビューの方向を探る」にあたって
寺田  徹・根岸 勇太・大石茉由佳

座談会:ランドスケープ分野におけるプランニングとパートナーシップ
座談会:「地図」と「書店」から考える論文レビューの方向性
小野良平・渡辺貴史・秋田典子・水内佑輔・根岸勇太・
大石茉由佳・寺田 徹

論説
庭園史:深化する庭園研究
関西 剛康
公共空間史:変容するパブリック -スペース・プロセス・バリュー
武田 重昭
ランドスケープデザイン:庭園意匠研究成果の実践的活用に向けて
大野 暁彦
公園緑地の計画と管理:制度の転換期の研究動向
竹内 智子
環境に対する行動・心理・生理:エビデンスに基づく環境設計と新しい「環境」研究にむ けて
讃井  知・高山 範理
まちづくりとコミュニティ:研究と実践の接点
三島 由樹
観光レクリエーションの展開:資源の形成,管理,これからの継承にむけて
武  正憲
緑化・施工・維持管理技術:グリーンインフラがもたらす環境改善効果
菊池 佐智子