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グローバル通信No. 15 日本造園学会COP10学生会議の取り組み報告

A report on activities of JILA COP10 Student Council

飯田義彦(京都大学大学院地球環境学舎 博士後期課程)
Yoshihiko Iida (Ph.D. student,
Graduate School of Global Environmental Studies, Kyoto University)

深町加津枝(京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
Katsue Fukamachi (Associate professor,
Graduate School of Global Environmental Studies, Kyoto University)

1 はじめに

造園学会COP10学生会議は2010年5月の造園学会全国大会において結成された学生主体の組織であり,COP10生物多様性交流フェア(名古屋市,2010年10月23日~29日)への出展を実行する過程で,「生物多様性の保全」に向けた具体的な提案や行動を主体的に行うための議論を重ねてきた.本稿では,造園学会COP10学生会議による交流フェアに向けた活動や展示の様子について報告する.

2 生物多様性交流フェアに向けた活動

2010年9月5日~9月7日に滋賀県大津市近江舞子にて合計6大学からの学生と教員32名,地元住民・NPOメンバー8名,滋賀県職員1名が参加し,講演や座談会,フィールドトリップを通して,身近な環境,生活の視点から生物多様性について議論した.
フィールドトリップでは内湖,琵琶湖と河川,集落と里山林,水田と水路という4つのテーマに分かれ,生き物に近い地域の暮らしや身近な生き物の保全活動などについて理解を深めた.現場で得られた知見や各自の意見をテーマごとに整理統合し,学生同士の発表や活発な議論を経て,「生物多様性の保全」にあたっては人や自然のつながりを意識しながら現状や過去から学ぶとともに,新たな仕組みづくりを進めることが重要であるとの共通認識に至った.

その上で,「Bi和Co」というキャッチフレーズを発案し,交流フェアではBiodiversityと4つの「Co」(Cooperation,Community,Communication,Commons)をつなげること(「和」)の大切さをアピールする方向性が打ち出された.

【集落班】守山集落入り口にある孤立木について説明を受ける[撮影者:上田]

【内湖班】地元のNPOメンバーや漁師の方から内湖の今昔の様子を伺う[撮影者:板垣]

【水田班】水田の水路で採集した水生生物を観察する[撮影者:内藤]

【湖岸班】喜撰川に設置された魚道について携わったNPOメンバーの方から説明を聞く[撮影者:佐々木]

模造紙上にフィールドでの情報を整理し,各自の意見を重ねていく[撮影者:佐々木]

各テーマでまとめたチャートをもとにプレゼンテーション [撮影者:久野(左),上田(右)]

議論を尽くした後,琵琶湖の白砂浜で集合[撮影者:佐々木]

3 生物多様性交流フェアの展示と発表

2010年10月23日~29日に名古屋市白鳥公園で行われた生物多様性交流フェアでは,フィールドと議論から得られた提言をふまえ,ポスター,映像,パンフレット,オブジェの各種メディアを使ったブース展示を行った.札幌市立大学,慶應義塾大学,東京大学,東京農業大学,京都大学からのべ35名の学生が参加した.
「滋賀・琵琶湖から学ぶ『生物多様性の保全』-現状と課題,百年後に向けた私たちの提言-」と題したポスターでは,「生きものと人の,新たな関係づくり」を目指し,「里地・里山の新たな利用による再生」,「たかが水田,されど水田-水田の再発見-」,「内湖人育成プロジェクト-自然との新しいお付き合い-」,「生息地修復活動の社会システム化に向けて」という4つの見方を提案した.ブースでは他に,合宿の様子や学生の想いなどを収録した映像をパソコン画面上に映し出し,フィールドの雰囲気や学生の思考を時間や空間を越えて再現した.また,展示内容をまとめたパンフレットの配布や付属資料を利用してのポスター解説を通じ,来訪者との生の対話をすすめた.

特に期間中,来訪者の注目を集めたものは地球をイメージしたオブジェ「地球木(ちきゅうぎ)」であった.「○○年後,あなたはどんな暮らしがしたいですか?」というメッセージを紙でできた葉っぱに記入してもらい,七夕の短冊飾りのように来訪者の将来への想いを託してもらうものであった.この葉っぱのメッセージは日々積み重ねられ,最終的に526枚もの数にのぼった.大半の方が将来は自然豊かな場所で家族とのんびりと時間を過ごしたいとのメッセージを書いており,今後とも「生きものと人の,新たな関係づくり」を考えるためのヒントを得る機会ともなった.

展示に使用したポスター6枚組

ポスター,映像,キャッチフレーズ「Bi和Co」,ロゴマークなどの解説を介して来訪者との生の対話が図られた[撮影者:飯田]

オブジェ「地球木」にくくりつけられた葉っぱのメッセージは最終日に総数526枚にのぼった[撮影者:飯田]

各日のブース展示を担当した学生たち