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2021年度日本造園学会賞(設計作品部門)

山木慎介氏,若生謙二氏,渡辺美緒氏,堀井大輔氏

上野動物園 パンダのもり

 

本設計作品は,既存施設の老朽化に伴って動物園内に新設されたジャイアントパンダの展示施設とその周辺のランドスケープが対象である。本作品の優れた点として,以下が挙げられる。ジャイアントパンダが生息する中国四川省等の山岳部のランドスケープを創出し,彼らの生息環境とそこでの行動を誘発する生息環境展示を実現していること。園路沿いの造形サインやレッサーパンダやキジ類との出会いなど,物語性や適切に配置された仕掛けによって混雑時の滞留への配慮と期待感の高まりを演出していること。動物側の造形や造園と,観客側の通路の傾斜や配置,ガラスフェンスなどの適切なデザインによってストレスを感じない展示空間となっていること。既存の周辺施設やモノレールなどへの視線の遮蔽の巧みさ。交互に配置された屋内・屋外展示や曲線の配置,間の植栽などで,パンダとの臨場感のある遭遇をしつつ観客同士の目が合うことが避けられていること。屋上緑化などを効果的に用いて一体化した施設の意匠。そして維持管理にも配慮され,現場で柔軟に動線を変えられる園路の計画であること。パンダにとっての快適な生育環境を確保しつつ,教育・啓発と娯楽性を空間として統合し,ひとつの風景を作っており,上野動物園という有名な施設において多くの関係者による複雑な要求事項を取り込んで造園技術をもって解決している本施設は,日本造園学会賞(設計作品部門)を授与するに相応しいと判断された。