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2021年度日本造園学会賞(著作部門)

藤井英二郎氏,海老澤清也氏,當内匡氏,水眞洋子氏

街路樹は問いかける-温暖化に負けない〈緑〉のインフラ

 

本書は,街路樹に関するアメリカ,ドイツ,フランスの良好な事例を紹介しながら日本の街路樹整備・管理の課題を抽出し,多彩な役割を担う街路樹をのびのびと育て街路樹のもつ可能性を最大限に生かしていくことを提言している。日本の街路樹は,概ね1960 年代までは風格ある街路樹づくりのための考え方等が継承されていたが,その後の事業量の増加,業務の分業化,一定の目標達成等により危機意識が低下し,街路樹管理の劣化を招いたのではないかと考察している。また,現在,日本の多くの都市では「技術力(知っている)」と「使命感(実現する)」が分離しているとし,一部の都市ではそれらを一体のものとして継承する努力を行い,街路樹の再生を実現している状況を紹介している。そして,終章では「再生のための七つの提言」として,道路法の改正による新道路構造令の制定,管理の仕組みの構築,街路樹診断の改善等,街路樹情報のデジタル化と公開,街路樹憲章の制定等をあげ,それぞれについて具体的な取組を示している。さらに,本書は専門家向けの学術報告のような難しい表現を避け,全体をとおして誰にも理解しやすい平易かつ簡潔な表現に努めており,ブックレット(小冊子)としての刊行も執筆陣が意図する市民,社会への普及啓発に大いに寄与している。以上より,日本造園学会賞(著作部門)を授与するに相応しいと判断された。