「造園学会100周年記念事業」のねらい
日本造園学会100周年記念事業推進委員会
本学会は1925年4月14日に文部省から認可された社団法人であり(2012年から公益社団法人)、2025年には100周年を迎えようとしています。
学会の最大の財産は、いうまでもなくこれまでに蓄積された、会員による学術と技術の調査・研究及び実践の成果にあります。これらは基本的に出版事業等による各種刊行物に公表され活用されてきており、近年は電子化も進んで利便性も増しています(なおこの電子化は未完の部分もありますが、それは周年事業とは関わりなく整備されるべきものです)。
しかし、こうした成果が生まれるまでの、あるいはその成果から波及のあったさまざまな議論や活動、さらにそれらを動かした学会内外での人的交流、それらを支えた組織やその運営に関わる事柄等々については、当事者間を超えては必ずしも知られることもなく、時の経過につれて埋もれてきた側面も少なくありません。その結果、各論文等はそれぞれが生まれた文脈から切り離されて参照されているのが実状と思われます。
学術・技術の成果とはそのような性格のものといえるかもしれません。しかしその一方で、変容を続ける社会や自然のありようとともにある造園・ランドスケープの分野は、過去の成果が単に乗り超えられ、上積みないし上書きされていき直線的に発展するような学術領域とは異なると考えられます。それぞれの成果はそれを生んだ背景や文脈とあわせて省察的に理解されることで、新たな視点の気づきや議論の展開をもたらすなど、さらなる活用の可能性が広がるのではないでしょうか。
そこで、この節目の機会に、100年に及ぶ学会のさまざまな活動・取り組みについて、学会内外のいわば社会関係資本(ソーシャルキャピタル)的なものにまで関心を注ぎつつ、補助線を引きあるいは足場を掛けるようにして多角的に照らし出す作業を行いたく考えます。こうしてそれらを学会の「資産」として共有することで、これまでの学術・技術の成果に改めて鮮やかで生き生きとした脈動が与えられるようになることを期待します。さらにこの資産の活かし方を含め、これからの学の方向性について展望を持つとともに、その実行を支える学会運営に関わる環境整備にも取り組みたく考えます。
このねらいの方針の下で、以下の三つの事業をそれぞれ部会を組織して進めています。
1. これら資産を記録・集約し、将来世代に遺す
――「出版部会」
2. これら資産も踏まえ、今後の学のあり方についての展望を同時代的に共有する
――「記念行事部会」
3. これら資産の活用も含め、時代に即した学会活動のための情報基盤を整備する
――「インフラ部会」